『太極拳は、どうやって使うのですか?』
このような質問に対して、まず答えられることは、
『日常の様々な場面において常に使われています、今この瞬間もです。』
ということです。
どういうことかというと、
(ほんとうに、その言葉通りなのですが)
まず『太極拳』は、その発祥については諸説あり、いくつかの流派がありますが、
いずれにしろ『武術』でありますから、
『どうやって使う?(使い方)』と問われれば、
それは『武術の使い方』という意味での答えになります。
そして『武術』とは、古今東西に存在し、
その使用目的と、使用する上で想定される状況は『無限』に存在します。
あらゆる状況に対して、その全てに(何かしらの)対応をするのが『武術』であり、
空手道や、柔道も同じです。
ここで大切な事は、
【あらゆる状況に対応するために、たくさんの技を身につける】ということではなく、
【状況に応じて無限に拡張し得る『基盤』のようなモノを身につける】ということです。
これは、いわゆる『形(型)カタ』と呼ばれるモノを反復練習することによって身につけることができます。
その『基盤』とは、
まず何と言っても【腹の座った感覚】、それによる【適度なリラックス感 (≠完全脱力)】、それによって有効となる【身体の重さ(≠体重)】、・・・【視覚以外で周囲の空間を捉える肌感覚】などです。
形を練習する目的を間違えると、これらの重要な感覚を身につけることが困難になってしまいます。
ある武術の『形』は、『技』としての体裁をしていますが、それは一つの目安に過ぎず、
それよりも遥かに重要な『身体的な変化』と、そこから生まれる『感覚』に着目していかなければ、
いつまでたっても『形』は空虚なモノであり続け、
結果として、
『形を練習しても意味が無い』、『武術は使えない』、『太極拳は使えない』
という間違った考えに至ってしまいます。
これは非常に勿体ないことです。
太極拳に『単鞭(たんべん)』という象徴的な形があります。
左の掌を前方にかかげ、右手は鈎手(こうしゅ)という独特の形にして右の側方にかかげます。
これについて、次のような解説を聞いたことがあります、
『右手(鈎手)は右のコメカミの高さに置きます。これは、相手が右から頭部を蹴ってきた時に防ぐためです』
はっきり言いますが、そんなワケありません。